英語の質の低い論文の査読を頼まれた時の対処法:プロの英文校正サービス

査読が厳しいものになってしまう原因は様々ですが,査読者が論文原稿の文章をきちんと理解できないというのもその一つです。本記事では,その解決策として英文校正サービスの利用についてお話します。

最終更新日:2018年3月26日

a peer reviewer having language trouble while peer reviewing a manuscript

要約

英語ネイティブでない研究者が研究成果を最大限明確に伝えるのをサポートしてくれるプロの英文校正サービス。このようなサービスは執筆者にとっても査読者にとっても研究発表のプロセスをスムーズにしてくれるわけですが、プロの英文校正サービスがあることを知らない査読者も少なくありません。

しかし、この認知度の低さのせいで素晴らしい内容の論文が不幸にもリジェクトされたり、査読者が担当論文の英文校正までこなそうとして苦労したりするケースの多発につながっています。また、非効率的な査読のしわ寄せを最も強く受けるのは駆け出しの研究者たちであり、研究成果のジャーナル掲載が遅れたり、貴重な研究の時間を査読に割くことになったりといった不利益を被ることになってしまうのです。

そこで本記事では、必要であれば査読者が執筆者に対しプロの英文校正サービスを利用するよう勧めることができるよう、参考となる「ロードマップ」をご紹介します。このロードマップは論文査読にかかる時間を短縮し、執筆者が研究成果を明瞭に伝える上で必要な英文校正サービスを見つけられるようサポートすることで、研究発表のプロセスを効率化してくれることでしょう。

現代における学術言語としての英語

現代的な学術研究は世界中の研究者たちが連携して取り組む傾向にありますが、研究発表そのものは英語で行われるのが一般的です。研究発表の場を英語論文が独占する事態は比較的新しく、第一次世界大戦まではドイツ語・フランス語・英語が併用されていました[1]。そして、中国が年間の論文発表数で米国を上回るようになった[2]現在でも、学術言語のスタンダードはいまだに英語であり続けています。

査読者が直面する文章面でのトラブル

研究者たちの英語力は人によって異なるため、ジャーナルの査読を担当する専門家が思いがけないトラブルに直面してしまうことも少なくありません。ジャーナルに投稿された論文原稿が読者の内容理解を妨げるような英文で書かれているというのは、珍しいことではないのです。

英文の質が低い原稿を受け取った査読者にできることは多くありません:

  1. 英語ネイティブによる校正がなされるまで原稿をリジェクトする。
  2. たとえ内容が不明瞭でも、論文原稿の内容のみに基づいた査読を試みる。
  3. 論文原稿の内容に対するフィードバックを行うと同時に、原稿の一部あるいは全文にわたる文章校正をおこなう。

当社の経験からすると、3つ目の選択肢を採る査読者が多いように思われます。査読者の多くは良心的であり、学術研究の国際性や相互協力の重要性を心から信じているわけです。同僚たちの論文掲載をサポートしたいと考えるこのような査読者にとって、1つ目や2つ目の選択肢は不適切だと思えるのでしょう。

だからこそ、査読者たちは貴重な研究の時間を割いてまで無料で文章校正を引き受けているわけですが、これには負の側面もあります。当社の推計によれば、査読者たちはすでに毎年およそ1,500万時間も自分の研究以外の作業に費やしています[3]。その上、原稿の英文校正まで引き受けてしまってはさらなる時間のロスにつながってしまうでしょう。

とりわけ、駆け出しの研究者が査読を任されることになった場合、担当する論文原稿をときには数日かけて校正しようと試みる傾向が強いかもしれません。けれども、駆け出しの研究者は学術研究の世界に留まりキャリアアップを図るため、自分自身も積極的に研究発表を行って経歴を充実させなければならない立場にあります。そのため、他の研究者の原稿を校正する作業に余計な時間を割くというのは、彼らにとってことのほか重荷になってしまうわけです。

プロの英文校正サービスという選択肢

上に挙げたようなトラブルに対処する選択肢として、プロの英文校正サービスを利用するというものがあります。ちゃんとした企業の場合、校正担当者は全員英語ネイティブで英語圏の大学で修士号や博士号まで取得していることも珍しくありません。このような校正者は英語力の高さと論文テーマへの深い造詣を活かして、担当する原稿をジャーナル掲載可能なレベルまで引き上げてくれます。これによって、論文原稿は研究内容の意義に基づいて良し悪しを判断されることになるため、査読本来の目的が果たされるわけです。

ただし、ちゃんとした英文校正サービスを利用したからといって論文原稿がジャーナルに受理されるとは限りません。ジャーナル掲載率100%といった非現実的な実績を謳う英文校正サービスは研究者を食い物にする悪徳企業だと考えてよいでしょう。これは、研究発表の場ではびこるオープンアクセスのハゲタカジャーナルと対になる問題です[4]。

査読の過程で、プロの英文校正サービス利用を勧める際のロードマップ

では、査読を任された際に受け取った論文原稿について文章校正が必要だと判明したらどうすればよいのでしょうか?そこで、こういった問題のある論文原稿に建設的なコメントを付けるためのステップをご紹介しましょう。

1. 論文原稿の内容には価値があると思える場合には、そのことを伝えましょう。

掲載前に文章を磨くことで、研究成果の影響力を高めることができるはずだと説明してください。

2. プロの英文校正サービスに依頼するよう執筆者にアドバイスしましょう。

学術誌によっては専属の校正サービスを持っていることもあるため、ジャーナルや出版社のウェブサイトで情報をチェックしましょう。特に指定がない場合は,「研究者向け英文校正サービス」といったキーワードを用いて信頼できる英文校正サービスを検索するよう執筆者にアドバイスしてください。また、サービスの利用を検討する際には、その企業が質の高い校正サービスを提供しているかどうか確かめるよう伝えましょう。オンライン上の評判や執筆者の同僚たちによる評価が、各社の提供するサービスの質を推し量る上で役に立つかもしれません。

3. 原稿がしかるべき英文校正を経たら、再査読する意思があることを伝ましょう。

4. 次回の投稿に際には前もって英文校正サービスを利用するよう、執筆者にアドバイスしましょう。

このステップによって、次回は執筆者がジャーナル投稿してから掲載までにかかる時間が短縮されるはずです。

結論

学術研究の国際化に加え、論文執筆用の言語としてほぼ英語のみが用いられる現状は査読者や執筆者[5]にとってトラブルのもとになってしまうことがあります。しかし、プロの英文校正サービスはこういった課題の解決をサポートしてくれるかもしれません。こういったサービスの建設的な利用によって研究発表を効率化したり、研究論文の内容をより明確にしたりすることができるのです。

本記事執筆に当たって協力してくださったLuciana Leopold氏、Ben Mudrak氏、Theresa Somerville氏、および体験談を寄せてくださった研究者の方々にはこの場を借りて感謝の意を表したいと思います。

この記事は、査読に関するシリーズの一部です。すべての記事はこちらからご覧ください。

参考文献

[1] Porzucki, Nina, 6 Oct 2014. How did English become the language of science? Public Radio International. https://www.pri.org/stories/2014-10-06/how-did-english-become-language-science

[2] 23 January 2018. Policy and ethics: China declared world’s largest producer of scientific articles. Scientific American. https://www.scientificamerican.com/article/china-declared-world-rsquo-s-largest-producer-of-scientific-articles/

[3] Peer review: how we found 15 million hours of lost time. Author Resource Center, AJE. https://www.aje.com/en/arc/peer-review-process-15-million-hours-lost-time/

[4] Beall, Jeffrey, 13 Sept 2012. Predatory publishers are corrupting open access. Nature, v. 489, p. 179. https://www.nature.com/news/predatory-publishers-are-corrupting-open-access-1.11385

[5] How language affects research [plus a survey]. Author Resource Center, AJE. https://www.aje.com/en/arc/how-language-affects-research/

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