
引用とは、他の研究者が発表した文章、データ、考え方を、出典を明示したうえで自分の論文の中で用いることです。引用した文献の情報を整理して論文の末尾に載せたものが、参考文献(引用文献)リストです。論文の引用の書き方や参考文献の書き方には、大学やジャーナルごとに決まったルールがあり、とくに英語ジャーナルへの投稿では、投稿先が指定する引用スタイルに正確に従うことが求められます。
この記事では、以下の内容を解説します。
- 引用の基本(直接引用と間接引用)
- 文中での引用元の示し方と、et al. の使い方
- 主な引用スタイル(APA、MLA、Chicago、Vancouver)の違い
- 参考文献リストの基本的な書き方
- 英語ジャーナルに投稿する際の注意点
- 論文の引用でよくある失敗
論文で引用が必要な理由
引用は、自分の主張を先行研究の中に位置づけ、読者が出典をたどって内容を確認できるようにするために欠かせません。また、他人の考えや文章を出典を示さずに用いると盗用(剽窃)になるため、出典の明示は研究倫理の面でも重要です。どのような場合に引用が必要になるかについては、盗用の回避の記事でも詳しく解説しています。
直接引用と間接引用
論文の引用の書き方は、大きく直接引用と間接引用の2つに分けられます。
直接引用は、引用元の文章を一字一句変えずにそのまま用いる方法です。引用が短い場合は、日本語の論文では「」で、英語の論文では引用符(” “)で囲んで本文中に組み込み、そのすぐ後に出典を示します。引用が数行にわたる長いものである場合は、引用符を用いる代わりに、前後を1行ずつ空け、引用部分を字下げして本文と区別するのが一般的です。直接引用では、著者名と出版年に加えて、引用箇所のページ番号も示す必要があります。たとえば、APAスタイルでは、40語未満の短い直接引用は引用符で囲み、著者名、出版年、ページ番号を記載します。ただし、直接引用を多用すると、自分の意見が論文にあまり書かれていない印象を与えかねません。引用元の表現そのものに意味がある場合に限って用いるのが適切です。
間接引用は、引用元の内容を要約し、自分の言葉で述べる方法です。引用が長い場合や、直接引用すると読みにくくなる場合、別の言語で書かれた文献を引用する場合などに使われます。間接引用では、引用元の意図を曲げずに、自分の言葉で説明することが重要です。元の文章をわずかに変えただけの言い換えは、出典を示していても盗用とみなされることがあります。詳しくは、盗用の定義の記事をご覧ください。
文中での引用元の示し方
本文中で引用元を示す方法は、大きく2つの方式に分かれます。
- 著者年方式:引用箇所の後に、(著者名, 出版年)のように括弧内で示します。参考文献リストは、登場順ではなく著者名順に並べます。APAスタイルなどで用いられます。
- 番号方式:本文中での登場順に番号を振り、参考文献リストも番号順に並べます。Vancouverスタイルなどで用いられます。
たとえば、同じ内容でも、著者年方式では「…と報告されている(Smith, 2020)。」、番号方式では「…と報告されている[1]。」のように表記します。
著者が複数の場合と et al.
著者が複数いる文献を本文中で引用する場合の表記は、引用スタイルによって異なります。たとえばAPAスタイルでは、著者が2人の場合は両方の姓を示し、3人以上の場合は第一著者の姓の後に et al. を添えて示します。et al. の使い方については、学術論文でのet al.の使い方(具体例)で具体例とともに解説しています。複数の文献を同時に引用する場合は、(Smith, 2018; Lee, 2020)のように、セミコロンで区切って示すのが一般的です。
主な引用スタイル
引用や参考文献リストの書式は、投稿先のジャーナル、大学、学会が指定するスタイルに従う必要があります。代表的なスタイルには、次のようなものがあります。
- APA(American Psychological Association)スタイル:教育、心理学、科学などの分野で使われます
- MLA(Modern Language Association)スタイル:人文科学の分野で使われます
- Chicago/Turabianスタイル:ビジネス、歴史、美術などの分野で使われます
- Vancouverスタイル:番号方式の代表的なスタイルで、医学・生命科学系のジャーナルで広く使われています
同じスタイルを採用しているジャーナルでも、細部が異なる場合があります。たとえば、オープンアクセスジャーナルのPLOS ONEはVancouverスタイルを採用していますが、引用番号を角括弧の中に入れたり、参考文献リストの句読点のスペースを省いたりするなどの変更を加えています。こうした小さな違いでも、書式が合っていないと、投稿時に修正を求められる原因になります。
参考文献リストの基本的な書き方
論文の参考文献の書き方の基本は、読者が文献を特定してたどれるだけの情報を、決められた順序で参考文献リストに記載することです。学術論文の場合は、一般に、著者名、出版年、論文のタイトル、誌名、巻・号、ページが基本的な情報です。書籍の場合は、書名や出版社の情報が加わります。
たとえば、学術論文を参考文献リストに載せる場合の基本的な形は、次のようになります(実際の書式はスタイルやジャーナルごとに異なります)。
- APAスタイル:著者の姓, 名の頭文字. (出版年). 論文のタイトル. 誌名, 巻(号), ページ.
- Vancouverスタイル:番号. 著者の姓 名の頭文字. 論文のタイトル. 誌名. 出版年;巻(号):ページ.
本文中で引用した文献はすべて参考文献リストに載せ、リストに載せた文献は本文中でも引用されているようにします。本文とリストの対応を最後に必ず確認しましょう。引用の数が多い論文では、ZoteroやMendeleyなどの引用管理ツールを使うと、参考文献を整理しながら、本文中でも正しく引用できます。引用管理ツールについては、疑わしい研究行為(および研究における不適切な行動)でも触れています。
英語ジャーナルに投稿するときの注意点
英語論文の引用の書き方でとくに気をつけたいのは、次の点です。
- 投稿先の引用スタイルを確認する:引用スタイルや参考文献の書式は、ジャーナルの投稿規定(オーサーガイドライン)で指定されています。執筆の早い段階で確認しておくと、後から書式を直す手間を減らせます。参考文献数の上限が設けられているジャーナルもあります。
- 原典を引用する:ほかの論文で紹介されていた考え方を引用する場合も、その論文ではなく、元のアイデアや概念が最初に発表された文献を引用します。
- 最近の文献を引用する:編集者は、著者が最新の研究を引用しているかどうかを確認します。最新の動向を踏まえていることを示すうえでも、十分に最近の文献を引用することが大切です。
- アブストラクトでは参考文献を引用しない:アブストラクトには参考文献を引用しないのが一般的です。引用が必要な背景の説明は、序論や本文で行います。
- 日本語の文献を引用する場合は規定を確認する:英語論文で日本語の文献を引用する際の表記は、引用スタイルやジャーナルによって異なります。投稿規定で確認してください。
投稿前に原稿を見直す際のポイントについては、デスクリジェクトを回避するベストプラクティスも参考になります。
論文の引用でよくある失敗
- 直接引用なのにページ番号を示していない
- 直接引用を多用し、自分の意見や分析が論文の中で目立たなくなっている
- 出典を示していても、元の文章をわずかに変えただけの言い換えにとどまっている
- 原典を確認せず、ほかの論文で紹介されていた内容をそのまま引用している
- 論文の中で引用スタイルが統一されておらず、本文中の表記や参考文献リストの書式にばらつきがある
- 本文で引用した文献が参考文献リストに載っていない、またはその逆になっている
- 投稿先ジャーナルの引用スタイルを確認せずに書き進め、投稿直前に大幅な修正が必要になる
おわりに
論文の引用と参考文献の書き方は、書式のルールを覚えるだけでなく、出典を明示することで自分の研究を先行研究の中に位置づけ、研究の信頼性を高めるための基本的な作業です。英語ジャーナルに投稿する場合は、投稿先が指定する引用スタイルを早い段階で確認し、本文と参考文献リストの対応まで丁寧に見直しておくことが重要です。引用の仕方だけでなく、論文全体の英語表現にも不安がある場合は、AJEの英文校正サービスで、分野の専門知識を持つ編集者による確認を受ける
