論文の謝辞の書き方:著者との線引きと例文

論文の謝辞に、誰を、何を書くのかを、著者資格の基準との線引きから解説します。英語論文の Acknowledgments で使える例文のほか、書くときの注意点、学位論文の謝辞との違い、よくある失敗も紹介しています。

最終更新日:2026年10月29日

writing acknowledgments section in a research paper

謝辞(Acknowledgments)とは、研究や論文の執筆に貢献したものの、著者としての基準を満たさない人や機関に対して、感謝を述べるセクションです。研究費を提供した機関の記載も、ここに含まれるのが一般的です。論文の謝辞の書き方は、一見簡単そうに思えますが、誰を著者とし、誰を謝辞に記載するのかという線引きや、ジャーナルごとの規定への対応が必要になります。

この記事では、以下の内容を解説します。

  • 謝辞とは何か、論文のどこに何を書くのか
  • 著者と、謝辞に記載する貢献者の違い
  • 謝辞に記載する内容と例文(英語論文の Acknowledgments)
  • 謝辞を書くときの注意点
  • 学位論文(卒論・修論・博論)の謝辞との違い
  • 謝辞でよくある失敗

謝辞とは

謝辞は、研究を進めるうえで助けてくれた人や機関に感謝を示すためのセクションです。多くのジャーナルでは、論文の本文が終わった後、参考文献リストの前に置かれますが、位置や名称はジャーナルによって異なります。学術論文では、謝辞は簡潔にし、研究に直接関係する人や機関への言及にとどめるのが一般的です。

著者と謝辞に記載する貢献者の違い

謝辞を書く前に、まず、著者として記載する人と、謝辞に記載する人を区別しておく必要があります。国際医学雑誌編集者委員会(International Committee of Medical Journal Editors, ICMJE)は、著者資格の基準として、次の4つをすべて満たすことを挙げています。

  1. 研究の着想やデザイン、またはデータの取得、分析、解釈に、実質的に貢献したこと
  2. 論文の草稿を作成した、または重要な知的内容について批判的に推敲したこと
  3. 出版される最終版を承認したこと
  4. 論文のあらゆる部分の正確性や誠実性に関する疑問に適切に対応することに同意し、論文の内容に責任を負うこと

4項目をすべて満たす人は著者として記載され、満たさない人は貢献者として、謝辞に記載するのが一般的です。たとえば、技術者が単にデータを取得しただけの場合、資金の提供や監督のみを行った場合、試料を提供しただけの場合などは、それだけでは著者資格を得られません。こうした人々の貢献は、謝辞で示すことができます。著者資格の考え方については、著者の倫理:著者識別のベストプラクティスで詳しく解説しています。

謝辞に記載する内容

謝辞には、一般に次のような内容を記載します。

  • 実験や解析などの技術的な支援をしてくれた人
  • 研究について助言や議論をしてくれた人
  • 試料、データ、施設などを提供してくれた人
  • 原稿の執筆や校正を補助してくれた人
  • 研究費を提供した機関や助成金(助成金番号を含む)

研究費の提供機関は、謝辞の最後に記されることがよくあります。

謝辞の例文

以下は、英語論文の謝辞(Acknowledgments)で使われる表現の型です。[ ]の部分は、実際の内容に置き換えてください。

  • 技術的な支援:We thank [Name] for technical assistance with [task].
  • 助言や議論:We are grateful to [Name] for helpful discussions.
  • 試料やデータの提供:We thank [Name] for providing [materials or data].
  • 原稿の校正:We thank [Name or service] for editing the English text.
  • 研究費:This work was supported by [funding agency] (grant number [number]).

謝辞は、論文の本文に比べて、感謝の気持ちを表す表現が許される箇所ですが、簡潔にまとめることが大切です。なお、謝辞の見出しは、アメリカ英語では Acknowledgments と複数形で表記されることが多く、イギリス英語では Acknowledgements と表記されます。ジャーナルがどちらの綴りを採用しているかも、あわせて確認しましょう。

謝辞を書くときの注意点

  • 著者を謝辞に重複して記載しない:著者として記載されている人は、謝辞には記載しません。
  • 個人名を載せる場合は事前に了承を得る:謝辞に名前を載せることで、その人が研究の内容や結論を支持しているような印象を与える場合があります。個人名を記載するときは、事前に本人の了承を得ておくのが一般的です。
  • 簡潔に書く:研究に直接関係する人や機関に絞り、必要以上に長くしないようにします。
  • 投稿規定を確認する:謝辞の位置や、記載を求められる内容は、ジャーナルによって異なります。研究費の情報、倫理に関する声明、利益相反などを、謝辞とは別のセクションに記載するよう求めるジャーナルもあります。デスクリジェクトを回避するベストプラクティスでも、ジャーナルの投稿規定に沿った構成の重要性を解説しています。
  • 査読者への謝辞は規定を確認する:査読者への謝辞を記載してよいかどうかは、ジャーナルの規定によります。

学位論文の謝辞との違い

卒論や修士論文、博士論文などの学位論文にも、謝辞を載せるのが一般的です。学位論文の構成要素には、表紙、抄録、謝辞、目次、参考文献などが含まれます。詳しくは、修士論文(Thesis)と博士論文(Dissertation):その違いは?をご覧ください。

ジャーナルに投稿する論文の謝辞は、研究に直接関係する人や機関に絞って簡潔に書くのが基本ですが、学位論文の謝辞は、大学や研究科の規定、研究室の慣例に合わせて書くことになります。また、学位論文は日本語で書く場合と英語で書く場合があり、英語で書く場合は、主語を I にするなど、論文の種類に合わせて表現を調整します。

謝辞でよくある失敗

  • 著者資格を満たす人を、謝辞だけに記載してしまう
  • 本人の了承を得ずに、個人名を謝辞に載せてしまう
  • 研究に直接関係のない人や事柄まで、長々と書いてしまう
  • 研究費の助成金番号など、ジャーナルが求める情報を記載し忘れる
  • ジャーナルの規定を確認せず、謝辞とは別のセクションが必要な情報を謝辞にまとめてしまう
  • 日本語の文章をそのまま英訳し、英語として不自然な表現になっている

おわりに

謝辞は短いセクションですが、研究に貢献した人や機関を適切に示し、研究の透明性を高める役割を持っています。著者と貢献者の線引きを正しく行い、ジャーナルの規定に沿って簡潔にまとめることが、謝辞を書くうえでの基本です。謝辞を含め、論文全体の英語表現に不安がある場合は、AJEの英文校正サービスで、分野の専門知識を持つ編集者による確認を受けることもできます。

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