質的研究と量的研究の違い:データ・方法・選び方
質的研究と量的研究は、異なる種類の問いに、異なるデータと方法で答えます。この記事では、それぞれの内容と例、質的データと量的データの違い、混合研究法、アプローチの選び方とよくある失敗を解説します。
最終更新日:2026年11月5日

量的研究とは、数値のデータを集め、統計を使って測定、比較、関連の検証を行う研究のことです。質的研究とは、言葉、観察、画像などの数値ではないデータを集め、意味、経験、理由を探る研究のことです。質的研究と量的研究の違いを理解することは研究デザインの土台であり、どちらのアプローチを取るかによって、研究課題、対象者、データの集め方、結果の評価の仕方が決まります。
この記事では、以下の内容を解説します。
- 量的研究と質的研究のそれぞれの内容と例
- 質的データと量的データの違い、アンケートは質的か量的か
- 2つのアプローチの比較表
- 混合研究法が両者をどう組み合わせるか
- 質的研究と量的研究の選び方と、よくある失敗
量的研究とは
量的研究は、どれくらい、何人、どのくらいの頻度、関係はあるのか、といった問いに答えます。観察を数値に置き換え、統計的に分析して、多くの場合、仮説を検証します。代表的な方法には、実験、選択式の質問によるアンケート調査、構造化された観察、既存の数値データの分析などがあります。
新しい運動プログラムが血圧に与える影響を、介入群と対照群に分けた300人の参加者で比較する研究は、量的研究です。標本の選び方がよければ結果を母集団に一般化できること、方法を再現できること、結果の統計的な有意性を検証できることが強みです。一方、数値では背景や意味が見落とされやすいこと、結果が、測定の道具が概念をどれだけうまく捉えているかに大きく左右されることが限界です。概念を測定可能な変数にする方法は、概念的定義と操作的定義とは?研究における違いと書き方で解説しています。仮説の中での変数の扱いについては、研究仮説の立て方もご覧ください。
質的研究とは
質的研究とは、なぜ、どのように、その経験はどのようなものか、といった問いに答える研究です。人々の見方や行動と、それが生じる状況を探ります。代表的な方法には、詳細なインタビュー、フォーカスグループ、参与観察、文書や録音の分析などがあります。質的研究の分析方法は、データからパターンやテーマを見いだすもので、テーマ分析や内容分析などがあります。日本では、SCATや質的帰納的分析といった手法も使われています。質的研究は、看護研究や教育研究などの分野でも広く用いられています。
夜勤をどのように経験しているかを15人の看護師にインタビューし、その語りに含まれるテーマを見いだす研究は、質的研究です。深さ、背景への注意、予想外の発見を追いかける柔軟さが強みです。一方、標本が小さくなるのが一般的で、結果を統計的に一般化できないこと、分析に研究者の解釈が伴うため、それを透明に扱う必要があることが限界です。
質的データと量的データの違い
2つのアプローチは、2種類のデータに基づいています。量的データは、血圧の測定値、テストの得点、通院回数のような数値のデータです。質的データは、インタビューの逐語録、自由記述の回答、フィールドノート、写真のような、記述的なデータです。質的研究と量的研究では分析の道筋も異なり、数値のデータには統計的な検定、記述的なデータにはテーマ分析や内容分析が用いられます。
質的データと量的データは、必ずしも一方のアプローチだけに結びつくわけではありません。質的データをコード化して数えることもできますし、量的研究にも、測定値だけでなくカテゴリーが含まれることがあります。重要なのは、データをどのように集め、どのような問いに答えるために使うかです。
アンケートは質的か量的か
アンケートは、質問の種類によって、質的にも量的にもなります。5段階評価で満足度を尋ねるような選択式の質問は、数えて統計的に分析できるデータが得られるため、量的です。回答者が自分の言葉で書く自由記述の質問は、質的なデータが得られます。多くのアンケートは、両方を組み合わせています。量的調査と質的調査の違いは、このように、質問の形式とデータの扱い方に表れます。
質的研究と量的研究の比較
<table style="width:100%; border-collapse:collapse;">
<thead>
<tr>
<th style="border:1px solid #ddd; padding:10px; text-align:left;">項目</th>
<th style="border:1px solid #ddd; padding:10px; text-align:left;">量的研究</th>
<th style="border:1px solid #ddd; padding:10px; text-align:left;">質的研究</th>
</tr>
</thead>
<tbody>
<tr>
<td style="border:1px solid #ddd; padding:10px;"><strong>主な目的</strong></td>
<td style="border:1px solid #ddd; padding:10px;">測定、比較、仮説の検証</td>
<td style="border:1px solid #ddd; padding:10px;">意味、経験、理由の探索</td>
</tr>
<tr>
<td style="border:1px solid #ddd; padding:10px;"><strong>典型的な問い</strong></td>
<td style="border:1px solid #ddd; padding:10px;">どれくらい? 何人? 関係はあるか?</td>
<td style="border:1px solid #ddd; padding:10px;">なぜ? どのように? それはどのようなものか?</td>
</tr>
<tr>
<td style="border:1px solid #ddd; padding:10px;"><strong>データ</strong></td>
<td style="border:1px solid #ddd; padding:10px;">数値</td>
<td style="border:1px solid #ddd; padding:10px;">言葉、画像、観察</td>
</tr>
<tr>
<td style="border:1px solid #ddd; padding:10px;"><strong>標本</strong></td>
<td style="border:1px solid #ddd; padding:10px;">比較的大きく、無作為に選ぶことが多い</td>
<td style="border:1px solid #ddd; padding:10px;">比較的小さく、意図的に選ぶことが多い</td>
</tr>
<tr>
<td style="border:1px solid #ddd; padding:10px;"><strong>データ収集</strong></td>
<td style="border:1px solid #ddd; padding:10px;">実験、構造化されたアンケート、既存のデータ</td>
<td style="border:1px solid #ddd; padding:10px;">インタビュー、フォーカスグループ、観察、文書</td>
</tr>
<tr>
<td style="border:1px solid #ddd; padding:10px;"><strong>分析</strong></td>
<td style="border:1px solid #ddd; padding:10px;">統計分析</td>
<td style="border:1px solid #ddd; padding:10px;">テーマ分析、内容分析</td>
</tr>
<tr>
<td style="border:1px solid #ddd; padding:10px;"><strong>推論</strong></td>
<td style="border:1px solid #ddd; padding:10px;">理論を検証することが多い(演繹的)</td>
<td style="border:1px solid #ddd; padding:10px;">理解や理論を構築することが多い(帰納的)</td>
</tr>
<tr>
<td style="border:1px solid #ddd; padding:10px;"><strong>質の基準</strong></td>
<td style="border:1px solid #ddd; padding:10px;">信頼性と妥当性</td>
<td style="border:1px solid #ddd; padding:10px;">信用性、転用可能性、依存可能性、確認可能性</td>
</tr>
<tr>
<td style="border:1px solid #ddd; padding:10px;"><strong>結果</strong></td>
<td style="border:1px solid #ddd; padding:10px;">標本が代表的なら一般化できる</td>
<td style="border:1px solid #ddd; padding:10px;">豊かで文脈的、統計的には一般化できない</td>
</tr>
</tbody>
</table>標本の選び方は、アプローチによって異なります。詳しくは、サンプリング方法の種類と選び方:無作為抽出から機縁法までをご覧ください。量的研究の質の基準については、研究における信頼性と妥当性の違いで解説しています。質的研究は、一般に、結果が信用できるか、他の状況にも転用できるか、安定しているか、確認できるか、といった観点で評価されます。
混合研究法とは
混合研究法(mixed methods research)とは、質的なアプローチと量的なアプローチを1つの研究で組み合わせ、互いの限界を補い合う方法です。数値は、あるパターンがどれくらい広がっているかを示し、インタビューは、それがなぜ起きるのかを説明できます。代表的なデザインには、次のようなものがあります。
- 収斂的デザイン:2種類のデータを同時に集めて比較します。
- 説明的順次デザイン:まず量的データを集め、その後、質的データで結果を説明します。
- 探索的順次デザイン:まず質的データを集めてテーマを探り、その結果を使って、アンケートの質問項目など、量的研究を組み立てます。
混合研究法は、より多くの時間を要し、両方のアプローチの技術が必要です。研究課題が、本当に両方の証拠を必要とする場合に選ぶのが適切です。
質的研究と量的研究の選び方
選択を導くのは、研究課題です。研究デザインの選択が先に来ることはありません。
- 量的研究を選ぶ場合:問いが、量、差、関係についてで、測定可能なアウトカムを定義して検証できるとき。
- 質的研究を選ぶ場合:問いが、経験、意味、プロセスについてのとき、またはテーマが新しく、まだ十分に理解されていないとき。
- 混合研究法を選ぶ場合:1つのアプローチだけでは問いに十分に答えられないとき。
使える時間、対象者へのアクセス、研究者のスキル、投稿先のジャーナルや読者が期待する内容といった現実的な要素も、選択に影響します。どのアプローチを選んでも、原稿の中で、その方法と限界を明確に記述する必要があります。
質的研究と量的研究でよくある失敗
- 研究課題を決める前に、方法を選んでしまう
- アンケートの質問が選択式か自由記述かを確認せず、量的だと決めつける
- 質的研究を、大きな無作為標本を求めるなど、量的研究の基準で評価する
- 質的研究の結果から、統計的な一般化を主張する
- 量的な測定の道具の信頼性と妥当性を、対象者に対して確認せずに使う
- 2種類のデータを統合していないのに、混合研究法と呼ぶ
- 原稿の中で方法の記述が短すぎて、査読者が結果を判断できない
おわりに
質的研究と量的研究は、対立するものではありません。それぞれが異なる種類の問いに答え、方法が目的に合っていれば、どちらも厳密です。研究課題、アプローチ、報告の仕方が明確に対応していることが、査読者に研究を説得力のあるものとして伝えます。論文を準備している研究者は、AJEの英文校正サービスで、分野の専門知識を持つ編集者による確認を受け、研究デザインや方法が、設計したとおりに明確に伝わる原稿に仕上げることもできます。
